先日古本屋で買った、飯嶋和一「神無き月十番目の夜」を読みました。この著者の小説は「始祖鳥記」が読了済、「黄金旅風」が読みかけ、という事でこれが3作目だったのですが、他2作に比べて明らかに速く読み終える事が出来ました。
というのも、著書の時代小説は文章がとても平坦なのが特徴で、後の2作は長時間読むのが難しかったのです。殆ど同じ響きの文章が滔々と続き、ただひたすら出来事や人物の説明がなされているような、そういう印象を受けていました。(こう書くと後2作は悪いように見えてしまいますが、そんな事は有りません。ただ文体だけが驚くほど抑制されているのです。)
ですが、こと「神無き月~」ではこれが表現として効いていて、重厚な迫力が有りました。雨垂れが石を穿つように少しずつ圧し掛かってくる文章には、例えば冲方丁「天地明察」のような爽やかな(語弊があるかな……)時代小説とは違った力感が満ちています。
加えて、以前茨城に住んでいた事もあるもので、舞台の山里を身近に感じるところも有りました。引き込まれたのはそれも一因でしょう。
というわけで、今度はより地元に近い場所が舞台の作品も読んでみたくなります。何が有るかなぁ。
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