ここ数週間は、毎週末高専ロボコンの地区大会をストリーミングで見ています。今日はその最終週、関東甲信越地区大会でした。
地区大会の開催日は、もっとも早い地区ともっとも遅い地区で1か月ほども開きがあります。全体的に見れば遅く開催される地区で良い結果が出やすいと言えますが、今年もその例に漏れませんでした。
今年の競技(輪投げ)では、すべてのポールに輪を入れることでその瞬間に勝利できます。その達成時間の全国最短記録が関東甲信越地区準優勝の産業技術高専荒川キャンパスA「荒鯊」による12秒でした。これは速い。それに、これでも位置決めに数秒使っているということで、まだ伸び代があるというのが素晴らしいです。
全地区大会が終わってみるとこうした全ポール狙いのチームは後述する得点勝負狙いのチームに対してやや不利に見えますが、それでも速さは正義です。今日の決勝戦(特に再試合)などは相性の悪さがもろに出た展開でしたが、得点までの速さを軸にして、最速勝利だけでない待ち合いやしのぎ合いの戦術を見出せると全国制覇が近づくのではないかと思います。決勝本試合の方は、その一つの手がかりになる気がしましたね。
惜しかったのはこの「荒鯊」に最速記録2位まで迫った長岡高専Bの「Nagaoka-Fireworks」(ナガオカファイヤワークスとお読みするそうです)でした。初戦の21秒という記録は全国でも2位です。この記録を持っていながら全国には行けなかったということで、今年の地区大会では最強敗者の一角かもしれません。特に、難易度の高い相手陣内のポールを狙うにあたって予備の輪を備えている点が実戦的です。同じ方向性の「荒鯊」と二戦目でぶつかってしまったのが不運でした。
一方で、今年のルールにはすべてのポールを狙わなくとも得点で勝負できる側面があり、優勝した長野高専Aの「C-RAZair」(シーレーザーとお読みするそうです)は現時点でその極北でした。準決勝での22得点は全国最多。フィールド中央のポールに大きな輪をまとめて掛けるのが肝なのですが、その確実性が際立っていました。また、試合後半の自陣中央からの戦い方も安定感抜群。その場から動かずに中央のポールも相手陣内のポールも狙える構造は、かなり難攻不落に見えます。
複数の打ち出し機構を連動させて大きな輪を打ち、個別に小さな輪を打つというシステムは他のロボットにも見られましたが、その扱いがトップクラスに上手かったです(ほかに上手かったのは大分高専Aの「輪射るどSPEED」など)。数少ない弱点は一旦自陣ポール前を離れないと中央ポールに大きな輪を掛けられない点で、守り合いで不利になるおそれがありますが、もしそこを改善できたらもっとも盤石なロボットになるのではと思います。
各賞を見てみると、技術賞の木更津高専A「花鳥風月」、デザイン賞の群馬高専B「上州カウボーイ」はそれぞれ妥当と思えます。個人的には「花鳥風月」がデザイン賞で、「上州カウボーイ」がアイデア賞かな、と思っていましたが、アイデア賞は母校小山高専Bの「輪Navi君」(ワナビークン)がとりました。うん。これは目出度いですよ。
一方で、先述の「Nagaoka-Fireworks」や長野高専B「infinity」(インフィニティとお読みするそうです)、東京高専B「゜ゑ」(ピェとお読みするそうです)などは会場を沸かせたものの、受賞には至りませんでした。(特別賞の受賞有無については拝見していないのでわかりません。すみません。)
「inifinity」は94年ロボコン大賞の「StarKing」をほうふつさせる遠心力による打ち出しで迫力がありましたし、全体的な完成度も上位だったと思います。惜しむらくは命中率でしたが、大会中にも改善されていて、見どころの多いロボットでした。
また、「゜ゑ」のような見るからに砲台型のロボットには、どこか別の次元で刺激されるものがあります。競技ルールに最適化されているわけではないにせよ、工業製品的に洗練された外見はカッコいいですよね。しかも、初戦で「荒鯊」に敗れたとはいえ制限時間内にすべてのポールに輪を入れていますし、エキシビジョンでも性能の高さを見せていました。
さて、そして恒例の母校拝見。
今年はホスト校ということで、例年のロボコン関係者の多くが運営に回っていたそうです。そのせいかどうか分かりませんが、今年はちょっと勢いがなかったようでした。
母校小山高専はAチーム<Bチームという戦力バランスの年が多くて、今年もそれは健在。でしたが、完成度の高いBチーム「輪Navi君」でもポールの攻略は1本ずつ確実に、とこじんまりとしたコンセプトに見えました。
うーん、これでは大量得点が売りのロボットや最速勝利を狙うロボットに対抗するには素直すぎます。伝統的に小山高専は博打的なコンセプトを好かない傾向があるので仕方ないとはいえ、もう少しスケールを大きくもって欲しいところでした。
なにより、布(今年はブルーシート)を使った打ち出し機構は2011年に全国大会でアイデア賞をとった「速球ぱらボルト」や2012年にロボコン大賞をとった「フレンドルフィン」で使ったものであって、今年もそれが売りというのはいささか残念なものがあります。この辺は春の学内審査の段階でふるいにかけて貰わないとなぁ。
Aチームのほうも、自陣ポールの得点が精いっぱいという感じでした。がんばれ。ほんとがんばれ。AチームOB(私は1度ピットに入っただけですが)としては応援せずにはいられません。
ともあれ、全国大会での各チームの健闘をお祈りしています。今日はお疲れ様でした。ありがとうございました。
PR