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蛙の末裔の妄創手帖

ポリシーは「ものに優しく」。
人畜無害で善良な変質者を目指します。
って、なにそれ?

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2025/02/03(Mon)00:52

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演習siasm

2014/11/04(Tue)23:50

 きわめて今更ですが、高専ロボコンの地区大会を拝見した感想を少しだけ書きます。

 一応ブラザーがまだ小山に在学中なので、注目は関東甲信越地区。結果から述べると母校小山高専は優勝だったわけですが、例によって勝ったのはお隣のチームでありました。
 いやぁ、すごいね彼ら。

 ちなみに、そのロボットたちを文化祭で間近に見てきたのがこの記事を書いたきっかけです。といっても、未来の対戦相手様にとって利になることは書けませんから、そこはひとつご了承ください。第一、私がそんなに深入りできるわけがないですし、あくまで一OBによる一般論ということで。




 先に競技をかいつまんで述べておくと、今大会の”出前迅速”というルールは、そばの蒸篭を何枚も積んで、ゴールへの配達を目指す障害物競争です。で、この「荷物を落とさないように運ぶ」というところが高専ロボコンオタク達にとってはデジャブでした。2006年の”ふるさと自慢特急便”も同様だったからです。

 そんなわけで、当時の大会で一定の成功を見たアイデアが多くのロボットに取り入れられていたわけですが……。さて、それでいいのかな?、という。


 ではまず、地区で優勝した小山Bの”ROCK君スインガー”について。
 試合を見た方の多くが指摘されるように、このロボットの一つの売りは角材ゾーン→斜面ゾーンの流れのスムーズさでしょう。6輪駆動の6輪ともが上下可能、前後の4輪は操舵もできるという足回りを持ち、車輪を横滑りさせることなく前後左右への平行移動と旋回を実現していました。

 また、6輪すべてを上下に動かせるという構造が斜面の攻略でフルに生かされていたのも出色です。
  そもそも、今大会は蒸篭の姿勢を保つために、カーブしたレールの上に台車を載せ、そこに蒸篭を積むチームが多く見られました。これこそ、2006年に成功したアイデアの一つでして、ROCK君スインガーもそれを踏襲しています。
 ただし、その機構が効いているのは前後方向だけ。斜面上で必要な左右方向の(蒸篭の)姿勢制御は、足回り上下用のサーボモータを使ってロボット全体を傾けることで、アクティブに行っていました。こういった、一つの機構を複数の用途で使う構成には知恵を感じて良いですよね。

 一方で、個人的にはこの足回り上下用サーボがこのロボットの運用上の弱点であるとも思います。角材ゾーンはともかく、斜面攻略時の姿勢制御にも活用しているとなると故障・消耗の影響が制御にモロに効いてくるためです。ましてや、常時自重が加わっている箇所ですからね。彼らのことなので、この辺りへの対策も打ってあるかとは思いますが、応援側として少し心配ではあります。

 それと、あえて全国への懸念点を挙げるとすれば、地区の段階ではスピード不足で1回しか運べなかったというところでしょうか。その分一度に多く運ぶわけですが、後述するようにカーブしたレールには構造的な限界があります。地区大会時の構成で果たして30段を一度に運ぶことができるのか、あるいは別の手を打ってくるのか、注目しています。

 これに対して、準優勝した東京高専の”そばな・そばを”は配達ロボットの”そばなちゃん”のスピードと、その操縦技能が秀逸でした。準々決勝、対小山A”小山小僧”戦では2回の配達を成功させていますし、蒸篭の姿勢制御がうまく決まれば全国でも多枚数の2回配達を成功させられると思います。

 個人的に、このロボットの蒸篭の姿勢制御は面白いと思っていて、もっと注目されれば良いのになぁと思いながらストリーミングを見ていました。

 どんなものかというと、外見上は(中の人じゃないので外見上しか語れませんが)3本の直動パラレルリンクと、前後左右に水平に動く台の組み合わせです。このうち前者で蒸篭に角度(姿勢)を与え、後者で水平方向の慣性力を吸収しようという考えのようでした。こうした分業体制は、蒸篭の水平位置と角度とを別々に、ある程度能動的に与えられるのが利点です。これはつまり、制御で良い仕事をすれば最適化を狙えるということで、なんとなく未来はこの方角にあるんじゃないかという気がしています。


 ではカーブしたレールを使うアイデアはどうなのかというと、こちらは蒸篭の水平位置と姿勢の関係がレールの形状に規定されます。パッシブな制御ですから構造自体は単純になりますが、どんな場合でも最適解を与えられるかと言われると微妙なところなのです。

 それと大事なのは、上の蒸篭ほど水平方向の移動量が少ないこと。静的に斜面を移動している分には姿勢さえ水平なら良いわけですが、足回りの加減速を考慮すると水平方向の慣性力も吸収しないといけません。先に述べたように、円弧状のレールは両方の機能を持った優れた機構ですが、構造上どうしても上の蒸篭は動きにくくなります。極端な話、仮にカーブを円弧だとすれば、その円弧の中心にある蒸篭は水平方向に動きません。

 そのため、結果的に、
多枚数を運ぼうとすると上の蒸篭が加減速でこぼれやすくなる⇔カーブの曲率を緩やかにすると斜面での姿勢維持に対応できない(しかもでかくなりすぎる)
という形で、限界が見えてきてしまいます。

 ちなみに、ごくいい加減な直観から発言すれば、このレールの形状を単純な円弧でない特殊な曲線(※)にする事によって、ただの円弧より高いパフォーマンスが得られるんじゃないかなぁと思ってはいます。まぁ、計算してないので保証はいたしかねますけれども。あるいは、もうやってるチームがあったかな?(※※)


 閑話休題。
 関東甲信越地区から全国へ行ったのはあと2チーム、産技高専品川キャンパスの”はにやんま”と木更津高専の”出前スカルゴ”でした。

 この2チームはまったく毛色が違いましたね。

 はにやんまの方は実は関東最強?だったんじゃないかというほどの武闘派。よりによって初戦の相手がROCK君スインガーだったのですが、一回目の配達途中に蒸篭を崩すミスが無ければ(あるいはあと10秒あれば)20対18で勝っていたとしてもおかしくありませんでした。外見上の特徴は埴輪の錘と細身のシルエットで、引き締まったカッコいいロボットです。スラローム→角材→斜面という一連の障害物を流れるように攻略していくロボットで、特に配達2回目は「これは大逆転あるで!」と思わせる素晴らしいスピードでした。なんというか、斜面をクリアする様子に力みが無くて、さっさと乗り越えてしまう感じなんですよね。全国の舞台で躍進が期待できるロボット、という点では一番手です。

 それと、オールドロボコンファンとしては、強い東京都立高専(現:産技高専品川キャンパス)が戻ってきて嬉しい、という面もあります。今年はもう一方の”大車輪壱四式”もベスト4ですし、完全復活じゃないでしょうか。このところずっと好調の東京都立航空高専(現:産技高専荒川キャンパス)も”江戸っ子 うさ丸”、”メイドロイド 3-GI”(このチームの自重しない感じ、いいね!)が両方ベスト8ですし、産技高専勢は来年も強そうです。

 一方、木更津の出前スカルゴはらせん状の車輪を使って角材ゾーンをクリアするのが売りのロボットでした。車輪がらせん状をしているのは既存の技術にも散見されますが、このロボットの車輪は、そのらせんを使って角材をまたごうとしたところに意義があると思います。2次元の円(普通のタイヤ)では無理でも、3次元のらせんならできる、というのは、なかなか小気味よいアイデアです。

 実は、似たようならせん状車輪は2005年、”大運動会”のルールでいくつかのチームが採用していたのですが、当時はほとんど顧みられなかったように思います。当時のらせんは壁を登るための車輪として使われていて、壁に生えたピンにらせんのねじ山を引っ掛け、さらにねじ山表面での摩擦力によって壁に機体を押し付けることもできる優れた機構だったのですが……。

 ただ、この手のらせんは作りにくいんですよね。大会でも木更津高専のメンバーがおっしゃってましたが、十分な強度を持つ任意の大きさのらせんを、望ましい精度で軽量に作るというのは地味に大変です。(※※※)個人的には、この取り組みに対してのアイデア賞であっても良いとさえ思っています。全国の舞台でらせんの実力を披露できると良いですね。

 ちなみに、オールドロボコンファンの中には、「またカタツムリがアイデア賞かよ」と思った方もいらっしゃったかもしれません。歴代には、89年アイデア賞の鈴鹿高専”エスカル号”や、94年アイデア倒れ賞の鶴岡高専”Speedy ESCARGOT”(すぴーでぃーえすかるご)がいます。これはもう、アイデア系の賞をとりたければエスカルゴで決まり!?なのかもしれませんよそこのお兄さん。

 最後に、一応私がOB面をして挨拶に行ける唯一のチーム、小山Aの”小山小僧”でしたが、これは健闘だったんじゃないでしょうか。初戦敗退の常連(※※※※)であるこのチームにとっては、次につながる価値あるベスト8だったはずです。正直、事前の内部情報ではそんなに戦闘力があるとは思っていませんでした。すまん。
 ともかくも、これは来年に期待大ですね!


 というわけで、無駄に長くなってしまいましたが、関係者の皆様、このたびはお疲れ様でした。有難うございました。


※想定される加速度や、斜面通過時の機体の傾きから計算することになるはずです。「○○曲線」みたいな固有名詞のあるものではないと思います。
※※そういう、非円弧曲線のレールを使っているロボットが有り得るので、本文ではずっと「カーブしたレール」と述べ続け、「円弧状のレール」と区別しています。
※※※どうして知ったかぶり口調なのかというと、まだメカナムホイールも知らなかった2003年ごろ、らせん状車輪を実現するにはどうすれば良いか(主に製造方法)を1ヶ月くらい毎日考えていたためです。ってあれ?それって結局知ったかぶりなのでは……。
※※※※近年強かったのは2度。2001年の地区準優勝(最少得点でしたが)と、2007年地区ベスト4→2008年全国準優勝。こう書くと強豪っぽいんですがねぇ……。ちなみにこの周辺の弱い時期(2002年~2006年と2009年~2013年)はぴったり私とブラザーの現役時期に重なります。まじかよー。因果関係ないよなぁ?
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No.566|ロボコン観戦Comment(0)Trackback

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