先週、九大工学部機械航空工学科の科目、「創造設計」の発表会に行ってきました。
この講義はグループワークで、いくつかあるテーマから一つを選び、それに沿うものを自由に作るという授業です。昨今普及してきた創造性教育、あれの一環ですね。
ただし九大機航では(どこの大学でも?)不要論が根強く、全般に縮小傾向です。
そしてそんな流れとは関係ないものの、わけあって今季の創造設計は1グループ、3人のみの発表でした。
テーマは、外部からエネルギーを与えて鉄球を半永久的に循環させるピタゴラスイッチ的装置(ルーブ・ゴールドバーグ・マシン)を作ること。
作品は道中にろうそくを熱源としたポンポン船を仕込むなど、なかなか意欲的でした。
当日、直前の調整では動いていたそうなのですが、本番では鉄球が飛び出したりポンポン船が沈んだり(!)……。
そんな苦労している彼らを見て、かつて似たような目に遭ったことを思い出しました。
実は私も10年前、この手の授業の発表会で自作のごみ処理機が動かなかったのでした。
(注:最近この手の挑戦をしていないだけで、今でも普通に遭遇しそうな気がしますが。)
そんなとき、当時の私は「機械も緊張するのだ」と自分に言い聞かせていました。
そう、手作りの機械は本番に弱いのです。
でも、なぜ?
まぁ、いろいろな理由が混然一体となってわからないから「緊張する」などと言うのですが、ここはあえて時間のファクターに注目してみたいと思います。
端的に言えば、調整時と本番とでは直前の調整からの経過時間が違う、ということです。
調整中ならば、ほんの数秒前、数十秒前に調整した状態での動作です。対して本番は、数十分、あるいはもっと経ってからの動作になるかもしれません。
そんなとき、手作りのロボットに良く使われる樹脂系の部材がもつ、変形の遅さが影響してこないでしょうか。
樹脂、いわゆるビニールやプラスチック、接着剤や粘着テープなどは粘弾性をもつため、力を受けたときの変形はゆっくりです。
一方で、こんなことってよくありますよね。
組立時に部品を力づくで変形させて加工誤差をなかったことにしたり、微妙な調整のためにその場で細部を曲げたり、設計の不備を粘着テープで補ったり、…………つらい。
ともかく、これらはロボットという構造物に弾性力を溜め込む行為です。
そうそう、ついでに重力も作用しますね。
そして待機中、主に変形を受け持っていた樹脂系の部材はその弾性力(残留応力)を解放して形を変えていくことでしょう。
粘性の強い部材では変形はゆっくりですから、調整の直後ならベストな形状を保っています。
しかし本番となると、長い待機時間中に変形して調整中とは違う形状になっているかもしれません。そのせいで、ロボットが動かなくなってしまう……かも。
本当かどうかは、ちょっとわかりませんけどね。
学問的にも、接着剤の剥がれや常温下での樹脂のクリープのような「かなり遅い動特性」は資料が多くないようです。
確かに、静力学屋は時間の関数を扱いたくないでしょうし、動力学屋は振動しないものに興味がないみたいですからねぇ。
でもまあ、そういう仮定のもとでは、ロボットに緊張させない方法は明らかです。
・粘弾性をもつ部材を曲げて調整する構造にはしない。
・粘着テープが不要なよう、設計段階でよく目を配る。
・部品は正確に加工し、無理な力を加えて組み立てようとしない。
・そして、早めに作って一度調整し、本番並みの時間をおいてから動作チェックをする。
なんだ。普通じゃないですか。
ロボットも人も、当たり前のことを当たり前にやることが緊張しないコツなのかもしれませんね。
……私は苦手だがな。
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